ダニ媒介脳炎|海外では多数の死亡例
北海道で8月15日、野外でマダニにかまれた道内の40代男性が
「ダニ媒介脳炎」を発症し、亡くなりました。
この病気の国内での確認は1993年に、今回と同じく北海道で見つかって以来23年ぶりでの2例目で、死亡は今回が初めて。
しかし、
死には至りませんでしたが、
1993年の患者は運動麻痺が後遺症として残り、車椅子の生活を余儀なくされています。
また、海外では、このダニ媒介脳炎はめずらしくなく、多数の死亡例が報告されています。
「ダニ媒介脳炎」って?
ダニ媒介脳炎は、ウイルスを保有する【マダニ】に刺咬(刺したり吸血したりすること)されることで感染する病気です。
ダニ媒介脳炎で死亡に至るまでの今回のけいい
道保健福祉部や札幌市保健所によれば、
男性は7月中旬に道内の草やぶでかまれたとみられ、発熱や意識障害、けいれん、髄膜炎などの症状が出て入院していましたが、13日に病院で死亡しました。
ダニ媒介脳炎の症状
潜伏期間は7~14日で、発熱や筋肉痛などのインフルエンザに似た症状の後、髄膜炎や脳炎を起こします。
髄膜炎や脳炎は、重い後遺症(上述のように1993年のときは運動麻痺が後遺症として残り、車椅子の生活に)を残すケースが少なくない病気で、
今回のように死に至ることもあります。
感染のしかた、経路は?
ウイルスを保有するマダニに刺咬されることによって感染します。
通常、人から人に直接感染することはないとされています。
しかし、感染した山羊や羊等の未殺菌の乳を飲んで感染することもあるとされています。
マダニがいない地域での感染はありません
厚生労働省によれば、
ダニ媒介脳炎は、日本脳炎と同じ分類(属)のフラビウイルスが原因で、
げっ歯類とマダニの間でウイルスが維持されています。
このウイルスを持ったマダニがいない地域では、感染はおきません。
北海道では一部地域(北海道南部)でウイルスが見つかっていますが、
島根県の一部でも、フラビウイルスの存在の可能性が排除できないようです。
調査では、北海道道南地域にはダニ媒介性脳炎ウイルスがの流行巣が存在。また、島根県でも流行巣の可能性がある。
マダニのいる場所
一般にマダニは、
・沢に沿った斜面
・森林の笹原
・牧草地
などに生息しています。
マダニは、
・家の中や人の管理のいきとどいた場所にはほとんどいません。
どんなにお掃除しても、家の中にかならずいる「ダニ」とはちがいます。
【マダニ対策】|マダニに咬まれないようにする
ダニ媒介脳炎にならないためには、【マダニ】に咬まれないようにするほかありません。
ふつう、マダニは家ダニのように屋内にはいません。なので、屋内では心配なさそうです。
しかし、流行地域など、病原体の存在が知られている地域で、草の茂ったマダニの生息しそうな場所に入るばあい、
長袖、長ズボン、厚手で長めの靴下を着用し、できれば長靴やブーツを履きましょう。
サンダルのような肌を露出するようなもので草の茂った場所に入るのはぜったい避けましょう。
【マダニ】の嫌がる忌避剤の併用も効果が期待できるようです。
また、病原体がいる可能性のある地域での野外活動の後は、かならず入浴し、【マダニ】に刺されていないか全身くまなくたしかめ、
【マダニの咬着】が認められた場合は、皮膚科などでマダニの頭部が残らないように除去してもらうことも重要*です。
*【マダニ】類は人体に噛みつくと数日から1週間程度皮膚に噛みついたまま吸血を続けます。
ダニ媒介脳炎の流行国では、マダニが生息する森林地帯に入るなど、感染する危険性のある方に対して、不活化ワクチンの接種が行われることもあります。
しかし、このワクチンは日本では未承認です。
オーストリアのダニ媒介性脳炎ワクチンは日本では許可されていず、接種のためにはIMMNUNO AG 社から直接輸入しなければならないが、その手続きは非常に繁雑である。
わが国でも北海道にダニ脳炎ウイルスが定着していることが判明し、オーストリアでは日本人の死者が出た。またロシアの流行地に赴く日本人が増加し毎年7,000人を越えている。ヨーロッパの流行地にも毎年多数訪問している。
このような状況下で国内の流行地区の住民と国外の流行地に旅行する日本人を対象としたダニ脳炎予防のためのワクチンの実用化が緊急の課題となっている。
http://www.jsvetsci.jp/05_byouki/infect/05-dani.html
●マダニの活動時期・期間
たいていのマダニの活動時期は、5月から9月頃です。
しかし、冬の時期に活動する種類もいます。
また、冬の時期も冬眠しているわけではないので、寄生対象となる人間や動物が近くにいると寄生して血液を吸いますので、夏場は特に警戒しなければいけませんが、冬場も油断はできません。
マダニによる感染症|SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のばあい
マダニによる感染症は「ダニ媒介脳炎」だけではありません。
2014年度以降、西日本を中心にマダニによるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の感染が100例以上報告されています。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群); マダニ科のダニが宿主であると考えられているが、どのマダニ種が媒介するのかは特定されていない。
・SFTSウイルスを持つダニに咬まれることにより感染すると考えられているが、咬傷痕が確認できない場合もある。
・感染した患者の血液や体液との接触によるヒト-ヒト感染も報告されている。
・飛沫感染や空気感染の報告はない。
日本では2015年3月11日時点で100例以上の感染症患者が報告されている。
感染者は西日本で多い。
2013年に山口県で報告されて以降、主に九州(宮崎県8人)、中国(山口県死者5人)、四国(愛媛県7人)地方で確認され、2015年6月に初めて京都で80歳女性(回復)、2015年9月には、初めて北陸で石川県志賀町の60歳代男性が死亡した。
SFTSの症状:
SFTSウイルスに感染した場合、潜伏期間6日 – 14日を経て、38度以上の発熱や消化器系への症状が発生する。重篤化すると死亡する。致死率は10 – 30%と考えられている。
発熱や頭痛、筋肉痛、失語症などの神経症状、頸部リンパ節の腫れなどを伴う。特に高齢者は重症になりやすい。
SFTSの薬剤やワクチン:
治療は対症療法のみで、有効な薬剤やワクチンはない。
日本で【マダニ類】で感染が認められているその他の感染症
日本では、マダニ類はダニ脳炎のほか、日本紅斑熱、ライム病、ヒトバベシア症、エーリキア症といった感染症を媒介することもあることが知られています。
by http://www.eiken.co.jp/modern_media/
渡航前の健康相談など|厚生労働省
日本での死亡は今回が初めてですが、海外ではダニ媒介脳炎による死亡例が多数報告されているため、
厚生労働省では、
「日本から流行地に行って野外活動を予定されている場合は、全国の検疫所で渡航前の健康相談を行っておりますので、ご利用ください。また、帰国時に発熱などの症状がある場合は、検疫所の検疫官にご相談ください。」
という案内を公式サイトに掲載しています。
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